社長の想い

研ぎ澄まされた感性で、人にも環境にも優しい家をつくる工務店。

株式会社 木まま 
代表取締役 新谷 和之 氏

現代社会に対する疑問

人は、いつから工業製品に親しむようになったのだろうか。例えば、プラスチック。かつては木の素地に漆を塗って椀としていたものが、いつの間にかプラスチック製に取って代わった。割れない、安い、大量に速く生産できる。人々は、これを利点と思い、漆を塗られた椀は下火となった。これは、歴史物語ではなく、いままさに起きていることである。

同様に、住宅はどうだろうか。工業製品とは、新建材である。木のように見えるが、本当の木ではないもの。漆喰のように見えて、本当の漆喰ではないもの。そういうものが工場で大量につくられて、組み立てられた家が増えた。生きている素材ではないので、プラモデルをつくるように、精度に狂いが無く、しかし、どこか人工的で呼吸もしない家ができてしまう。

「木まま」の旨とするところ

これは、もはや好みの問題である。新建材でできた家が好きな人。自然素材でできた家が好きな人。それぞれあっていい。多様性が認められている社会とは、こういうことでもある。多様な価値観のなかで「わたしの価値観は、こうだ」と一人でひっそりと、しかし天に向かってまっすぐその手を挙げた若き人物がいる。

株式会社木ままの代表、新谷和之氏である。「家づくりは、住まう人が『きまま』に暮らすためのスタートです」というキャッチフレーズを掲げ、施主と向き合う。

新谷氏は、木、タイル、石、漆喰など、自然素材を大切にしている。これらにこだわりはじめたのは、新谷氏が大工の見習いだったころから。「弟子のころから、自然素材を活用したり、和とか伝統的な建築様式を重んじた住宅を建てたりすることが多く、自分が建てていていいな!と思っていました」。

現在は、日本古来の素材や建築様式にイマドキのセンスも取り入れて、新谷氏いわく「日本建築と洋風建築を足して割ったような感じ」の家を手掛けることが多い。

気づきが信念に

自分で工務店を立ち上げようと志したのは、大工として設計事務所からの図面通りに建てているときの気づきから。「もっと骨組みをしっかりした方がいいのではないか」「ここの収まりは、こういう方がいいのではないか」。現場で手を動かしていると、自分の意志が芽生えはじめる。考えながら仕事をしていると当然のことかもしれない。

「仕事をいただいていた設計事務所には僭越ながら」と恐縮しつつも、ついに自分で、自分が納得のいく家を建てるに至った。最初の発注者は友人。「自分を信頼してくれた」と穏やかな笑顔を見せる。

木ままのオフィスも、新谷氏が設計から施工までを手掛けた一軒家である。床は溶岩石、壁は漆喰。軸組は自然の木。釘を使わず、接合部は古来の日本建築に由来する工法で処理してある。開放感いっぱいの大きな掃き出し窓の向こうには、軒がしっかりと伸びている。角度のきつい夏の日差しは遮り、緩やかな角度で差し込む冬の陽光は室内の奥まで取り込める軒である。

心地良さの基準って何だろう

このような住宅は、全国区の住宅メーカーは、あまり得意ではないのだと想像する。木は生き物だから、ある程度の遊びが生まれる。天然木を使うということは、その遊びを容認することでもあるし、経年変化による味わいを愛でることでもある。つまり、均質化しづらい世界は、全国展開のメーカーは得意ではないのだと思う。

しかし、新谷氏の感性は、ニッチかもしれないが、まさにこれからの日本で大切にしたいものでもある。大量生産・大量消費の揺り戻しか。または、そのような時代をくぐり抜けたわたしたちの経験則から得た、もっとも合理的で堅実な英知なのか。いずれにしても、新谷氏の価値観に住宅をゆだねるファンは、これから増えていくに違いない。

新築の設計・監理・施工など、工務店の仕事のみならず、リフォーム、古民家再生、家具設計なども手掛けている。まずは、感性が見て取れる総社市宿の本社を、ぜひ見ていただきたい。