社長の想い

嘘のない仕事で、お客様の命を守る家を建てる工務店。

株式会社 高橋建築 
代表取締役 高橋 弘 氏

木への圧倒的なこだわり

取材が始まるとまず、2つの木のサンプルを見せてくださった。一つは断面の色素が黒っぽく変色し、焦げ臭く酸っぱい臭いのする木材。もう一つは、断面が木本来の色で、木の香りがする木材。

「こちら(前者)は一般的な中・高温乾燥材で、後者は当社で微低温乾燥させた乾燥材です。どちらで家を建てたいですか」と、代表取締役の高橋弘さんは聞く。

素人にでも直感的にわかる。もちろん、後者の方である。しかし、前者が市場に流通している建築資材の多くを占めているのは、乾燥のスピードが速く、それゆえ材木屋さんが大量の在庫を持たなくてもよいという企業側の事情が優先されているからである。木材は、一気に高温で乾燥してしまうと、組織が死んでしまう。固くてもろいという表現がぴったりの材にしかならない。

同社は、原木を仕入れ、自社で長い年月を掛けて自然乾燥または4度〜46度の「微低温乾燥機」でゆっくりと乾燥させる。それにより、ねばり強く香りのいい生きた材に仕上がる。その木材で家をつくるのが、同社の仕事である。

社長みずから足を運ぶアフターメンテナンス

自然乾燥だと、例えば8寸の大黒柱にできるまでにはおよそ3年かかる。もちろん、原木からゆっくりと年月をかけて乾燥させるためには、広大な敷地が必要となる。

そのため同社は、県内に本社とは別に1,000坪ほどの敷地を確保し、木材を乾燥させる倉庫を建てている。同社は年間およそ40棟建てているので、乾燥の時間と数年先の仕事を見通すと、そこに眠っているのは、膨大な数の材木であることが想像できる。

そこまで先行投資をしてでも、高橋社長は本物の木材にこだわる。「ウソの商売をしていないとわたしは自信を持って言い切ることができます。プライドを持って一生やり切ったと言える仕事をしています」と穏やかだが、確かな口調で語る。

社長みずから足を運ぶアフターメンテナンスも、自社の仕事にプライドを持っている証の一つである。1ヶ月点検、1年点検、2年点検、5年点検、その後は5年ごとに点検をするが、社長自らが回るのである。「自分が点検をするのだから、何年経っても壊れない家をつくろうと思いますよ」。例えば、塗り壁はノンクラック工法という亀裂の入りにくい工法を標準とするなど、お客さまにとってもその考え方のメリットは大きい。

約束は必ず守る

「何がお客さまにとっていいかを考えること」は、高橋社長が駆け出しのころから常々考えていたことだった。「最初は常用の大工として父と一緒に現場に入っておりましたが、自分の日当が高いと思われないように、昼飯も10分そこそこで食べて、さっさと現場に戻っていました」。二十歳過ぎのころから、高橋社長にはそのような顧客を思う気持ちがあった。

その姿勢のおかげで、最初は下請け工事からスタートしたものの、小さなリフォームの元請けへ、そして新築の受注を得るまでになった。「若いころは、デートは住宅展示場。道中に建築中の家があると、ちょっと現場を見せてもらう。そうしながら学んできました」。とにかく必死で仕事に食らい付いていた。

社員にも、このような姿勢を徹底させている。だからと言うべきか、同社には、営業社員がいないのも特徴的である。「営業は、どうしても調子のいいことを言って注文をとろうとしてしまうでしょう。本当のことしか言うなと社員には言っています。分からないことがあれば、『調べてきます』でいい」。

社長も失敗から学んだ。見積金額がはっきり分からず、900万円と伝えた後に、積算してみれば950万円かかることが判明した工事があった。しかし、高橋社長は900万円で最後までやり通した。「50万円損しても、一度言ったことを守り抜けないと信用を失います」。

ベテランから若手への技術継承

生きた木を扱う仕事において、技術の継承が同社の一つの課題である。現在、週に4日、退職された高齢者に来てもらい、木のベテランが若い職人さんを育てる機会を設けている。「仕事が減ると技術を教えたがらないベテランもいますが、それじゃだめ。うちは、定年制はないので、自分の意志で、元気なうちは仕事をしに来てもらえます。雇用を守っているので、年長者は若い者に安心して仕事を教えることができます」。

「この30年、会社から仕事を休んでくれとお願いしたことは一度もありません。会社には雇用している責任があります」。受注産業にあって、これは容易なことではないはずだ。仕事量を確保することに腐心されているのかと思えば、「仕事は減るようになっていません」と淡々と語る。「プライドをもって、お客さまにとって本当に何がいいかを問い続けると、おのずと答えはでます。その通りやれば、お客さまはついてきます」。

よく考えてみると、お客さまがついてくる以前に、社員がついてくる必要がある。「仕事は切らさない。給料は下げない。これだけは守っています。バブルのころに業界で引き抜きが横行したときでも、うちの者は誰一人動かなかった。感謝しています。社員の足もとを見るようなことはしたくありません」。

人口減少時代を迎えて、着工棟数が減ることについての不安は、「岡山県内で年間に40棟ほどの着工しかしていない。それでもうちが残れなければ、世間は見る眼がなかったのだと思います」と朗らかな笑みを浮かべた。