社長の想い

和気の街から世界の空へ!青空に泳ぐ「鯉のぼり」トップメーカー。

株式会社 徳永こいのぼり 
代表取締役 徳永 夕子 氏

新しい風にのって泳ぐ徳永こいのぼり

徳永こいのぼりに、新風が吹いた。2014年に社長が代替わりし、前回「わたくしごと」に出られた永宗黄二さんから、徳永夕子さんにバトンタッチ。「企業のめざす方向は大きく変えていません。前社長のもと社員が育ち、いい社風になっていたところでの交代でした」。

謙遜もあり簡単におっしゃるものの、社員は50名超。一人ひとりと意識をすり合わせ、めざす方向を一つにするのは容易なことではないはず。
「わたしが入社したのは、いまからおよそ20年前。その時から社員数は倍になっています。当時は毎日、全員と顔を合わせ、昼食も一緒に食べていました。そういう当たり前に思えたことが、50人になれば物理的に難しくなります」。

営業や出張などで、毎日顔を合わせない社員がいることがやむを得ない状況になってきた。そこで徳永社長は、組織を整え、部門長どうしの連携を密にするように促した。

「スペシャリストどうしの連携。それをまとめて判断するのが自分。そうすると、例えば、ミシンを扱っている人の意見がわたしのもとまで上がってくるんです。それは、一人ひとりの仕事が生きてくることを意味します。全員の顔が見える状況をいつもつくっておきたい」。女性ならではの、細やかな気遣いが、組織の隅々までに行き届く。

祖父が長男誕生を祝い作ったのがはじまり

さて、ここで同社の会社のアウトラインを見てみよう。
「わたくしごと」を長らく読まれている方には前回と重複することもありますが、あらためて。社名の通り、鯉のぼりのメーカー。創業は1947年。いまや岡山にとどまらず、全国シェアおよそ3割を占める業界トップの地位にある。

創業者の徳永春穂さんは、日本画家の巨匠、伊東深水に師事した美人画で有名な日本画家。創業の動機は、長男誕生を祝うため、自身で鯉のぼりを描いたことに起因する。

創業からしばらくは、鯉のぼりは和紙製。それから綿という時代が続いた。しかし、戦後まもなくして、ナイロンが誕生したころに、同社は一つの転機を迎える。それまでの綿は、水をたっぷりと吸うため、雨が降ったら家に片付けなくてはならないという不便さがあった。ナイロンももちろん天候の影響は受けるものの、水の含み方が綿より格段に少ないうえ、軽く、微風にも美しく泳ぐ。さらに、染色が鮮明に出るのも特長で、絵の美しさが圧倒的だった。

業界で頭一つ抜け出た。それから現在に至るまで、デザイン性や機能性、生産性を常に向上させながら成長を続けている。

時代の困難を乗り越えて

いま、鯉のぼりは逆風にさらされていることも否めない。住宅事情の変化はその主な要因の一つである。広い敷地に高いポールを立てて何尾もの鯉のぼりを泳がすことのできる家ばかりではなくなった。子どもを持つ世代のマンション入居率が高まったこともある。

徳永社長は知恵を絞った。「鯉のぼりを買わなかった人の意見を聞いて、商品開発に生かしてみよう」。これまで、販売店などを通して、同社の商品を「買った」顧客へのヒアリングはしたことがある。しかし、「買わなかった人」へのヒアリングはしたことがなかった。「購入したいが、住まいの事情などによりやむを得ず」という人が、そこに潜んでいることが分かった。

本来、鯉のぼりは、「家に男の子が生まれたので、お守りください」と願い、神様に降りてきてもらうもの。子を持つ親の願いは時代によらず普遍である。この取り組みにより、室内で飾る鯉のぼりや、マンションのベランダに立てる鯉のぼりなどが生まれ、一定の市場を獲得した。

新風を確かにとらえて踏み出す、新しい一歩

創業から半世紀以上が経ったいま、同社は、社会的および文化的な貢献度を高めている。日本の伝統的な文脈を持った鯉のぼりを、世界の空に羽ばたかせる取り組みである。

合言葉は、「和気の街から世界の空へ!」。タイやブラジル、アメリカやオランダ、トルコ、中国など世界各地において、要請や機会があれば世界中に鯉のぼりを送り届け、世界規模で日本の節句文化の継承を試みている。
しかし、足元を固めることも忘れていない。「会社は総合力だと実感しています。一人ひとりの能力をどれだけ引き出して伸ばせるか。自分一人の成長ではなく、社員も仕事を通して発揮できる能力が高まるような仕組みをつくることが一番大切だと考えています」。

この考えの先には、新しい事業構想も浮かんでいる。
「事業全体としては鯉のぼりの企画、開発、製造ですが、モノを手作りすることを得意としていますし、日本の文化を理解し、知識を持っているわたしたちができるブランドをつくっていきたい」。例えば、和雑貨などはその一例である。

社員の力を発揮できる領域を広げ、「徳永こいのぼり」として培ってきた実績のうえに新しい一歩を築こうとしている。温故知新の精神で、同社に吹いた新風は、かつてない新展開の予感である。

株式会社 徳永こいのぼり