社長の想い

こまやかな気づきの心で地域一番の居心地を提供する。

山本幸株式会社 
代表取締役 山本 修 氏

日帰り温泉から食事、観劇まで

瀬戸大橋温泉『やま幸』と聞けば、地元の人なら「あぁ、あの倉敷の」と日の丸の看板を思い浮かべる人も多いだろう。地下1100mの良質な源泉を生かした岡山県南最大級の日帰り温泉施設で、入浴のほかにもマッサージ&エステ、いけす料理、大衆演劇まで楽しめるとあって、地元の常連客はもちろん、わざわざ遠方から足を運ぶ方も多い。

代表取締役を務めるのは山本修さん。大学卒業後しばらくは一般企業に勤めたが、その後『やま幸』に入社。先代の叔父から社長業を引き継いだ。

「入社する前は『平日の昼間、ほんまにお客さんなんて来てくださるんやろうか』と思っていましたよ。会社勤めやったら、まず無理でしょう」。学生時代の名残だろうか。どこか関西アクセントの話ぶりに自然と緊張が解される。

一般企業に勤めていれば、真っ昼間の温泉など“非日常”の贅沢であり、平日のにぎわいとなると確かに想像しにくい。

ところが『やま幸』には、平日と週末、それぞれに違ったにぎわいが広がっている。平日のメイン層は、いわゆるシルバー世代。一方、週末やお盆、年末年始の時期になると、現役世代の姿が目立つ。普段は夫婦で、あるいは同世代の友人と連れ立って利用する平日の常連客が、休日は息子や娘、さらには孫たちを伴い、いわば“家族団らん”の場所として、平日とはまた違ったひとときを楽しんでいるのだ。

外出先の第一候補であるために

背景には、日帰り温泉施設ながら、温泉だけではない『やま幸』ならではの強みがある。温泉棟内のレストランに加え、別棟でいけす料理店も営む『やま幸』には、食事を楽しみに訪れる客も極めて多く、その割合は施設全体の4~5割。さらに時間が許せば、平日に1公演、日曜・祝日は2公演が催される大衆演劇を楽しむこともできる。ゆったり温泉につかるもよし、食事や観劇とともに半日ないしは一日を心ゆくまで過ごすもよし、の施設環境が、利用者の楽しみ方を広げている。しかしもちろん、ほかに競合がないわけではない。すばらしい温泉施設も、おいしい料理が食べられる店も、足さえのばせばいくらでもある。

「だからこそ、何か“事”を起こそうとしたときに『やま幸』を一番に思い浮かべていただく動機づけがなければダメなんです」。と山本社長は言う。

利用客に心地よい「残り香」を残す

その動機を、山本社長は“残り香”と表現する。

「当店には良質な温泉も、くつろげる設備も、おいしい料理や娯楽もある。でも例えば『あの旅は楽しかった』『あの店はいい店だった』と振り返るとき、具体的にそこで何をしたのか、何を食べたのか、はっきり思い出せないことも多いでしょう。楽しかった、心地よかった印象だけが、ただぼんやりと残っている」。

その印象を司るのが、サービスの質なのだという。

「何も特別なことをしようというのではありません。お客様の心に寄り添うこと、それがサービスの質を高める一つだと考えています。しかし実はそれがなかなか難しい。例えば同じお客様でも、一人でいらっしゃるとき、お友達とご一緒のとき、あるいはお子さまやお孫さまを連れていらっしゃるときとでは、目的が違いますからね。いつもはご自身が主役でも、どなたかを伴っていらっしゃれば、そこには『楽しませたい』『もてなしたい』というお気持ちがあるはずです。それを察した上で、求められる接客、サービスをご提供できなければ、決して心地よい“印象”を残して帰っていただくことはできません」。

日々の気づきが導く「お客様目線」

だからこそ、従業員たちには“気づき”の感性を育んでほしいと、山本社長は願う。

シフト制勤務で全従業員が一堂に会す機会のない『やま幸』では、それぞれの勤務時間に合わせて1日5回の朝礼が行われるが、最近、そこに身近な気づきを短く発表する場を加えたのもそのためだ。仕事帰りに立ち寄ったスーパーでの出来事や、家族との会話に感じたことなど、取り上げる内容は何でもいい。大切なのは、「気づく」習慣を身に着けること。誰かの「気づき」を知ることで、利用客の目線に立ってみること。

「普段から相手の立場に立って行動している人にとっては『何を今さら』ということかもしれません。でも自分では『できている』と思っていても、実は『できていない』ことに気づいていないだけかもしれない。あるいは落ち込んだり、悩んだりすることがあって、いつもできていることができなくなってしまうこともある。けれどお客様のお金をいただいてここにいる以上、そこにどんな理由があろうとも、私たちにはお客様のご期待にお応えする責任があります」。

積み重ねてきた小さな取り組みの成果が、その本領を発揮するのはまだこれからかもしれない。しかしそんな山本社長のひたむきな想いは、従業員たちの心の奥に届き始めているに違いない。