社長の想い

業界の常識を疑い、信念で市場を切り拓くペットフードブランド。

株式会社 ピュアボックス 
代表取締役 淺沼 悟 氏

業界の常識?

株式会社ピュアボックスは、ペット向け自然食の企画・製造・販売を行っている。平成15年7月7日の創業と同時に誕生した同社のブランド「ドットわん」は、いまやプレミアムフードを牽引する全国ブランドに育った。

かつて販促プランナーとして企業のブランド戦略を描いてきた淺沼社長がこの事業を興そうとしたのは、ドッグフード業界の常識に対する疑問があったからだ。

食肉加工の会社から和牛の販売促進の相談を受けたときのこと。一頭の牛が加工されて食肉になる過程を見せてもらう機会があった。そこで「トリミング」という作業を初めて見ることになる。肉の筋や変色した部位をとり除き商品を成形する作業である。淺沼社長は、昨日のことのように、実感を込めて語る。

「素人が見ると、結構バッサリと切り取るんですよ。そして、すぐに作業台の下に落とされて、産廃用のトラックに積まれる。『これ、どうするのですか?』と聞くと、ペットフード原料の一部になるというんです。つまり、ペットフードの安価な原材料の調達場所になっていたんですね」。

けっして衛生的とはいえないその扱いを見て、まず疑問を持ったと言う。

飼い主が安心して食べられるペットフード

「友人に『愛犬に何を食べさせているか?』と聞いたら、肉を多く使ったドライフードなんですね。パッケージはキレイなんですが、そこから出してしまうと何だか嫌な臭いがする粒で。品質がよく分からないものを与えて、飼い主は満足しているのだろうか。そういうことにものすごく違和感を感じたんです。犬もけっして美味しくなかろうと…」。

「しかし、法律的には食品ではないから、食材の調達や加工、運搬などに対して衛生管理や品質管理をする必要がない。そこで、飼い主が『自分たちが安心して試食できる!』というものがあれば、買い求めるのではないかと思ったんですね。ペットにも『食育』を求め始める時代が来るという予感もありました」。

ごまかしのない商品

何でこんな単純な発想をフードメーカーは持たないのか、そう思って淺沼社長が調べてみると、経済性が優先だという業界事情が分かった。

「とにかく安く大量に製造することが成果であって、質を上げるという発想がなかったんです。さらにペットフードの工場を視察させてもらったときに、あるメーカーの開発者から『ペットフードは、まぜて、つぶして、色をつけて作るんだよ』ということを教わりました。つまり「まぜる」「つぶす」「色をつける」がペットフードの常識、固定概念になっていたのです。その瞬間、確信しましたね。『これだ!』と。素人である僕だからこそ、その違和感に気づくんだと思いました」。

そして、これら3つのキーワードと真逆のものこそ、飼い主が潜在的に求めているものだと考えた。つまり「まぜない」「つぶさない」「色をつけない」。

「僕の使命は、素材のありのままを利用して、ごまかしの効かないペットフードをつくることです」。まっすぐに語った。

事業として社会に打って出たところには、さらに大きな願いがあった。「僕は、社会貢献がしたかった。いろんな人から『助かったよ』とか『ありがとう』とかと言って欲しいという欲求が昔からすごく強いんです。だから、ペット向けの自然食品をつくると決めたときも、この仕事を自分がやることで、人の役に立てるという自負や、飼い主さんに喜んでもらえるという信念を持っていました」。こうして、ピュアボックスは生まれた。

全国に展開する自然食ドッグフードメーカー

いまや「ドットわん」ブランドは、全国に広がった。北海道から沖縄県石垣島まで全国の食にこだわるペットショップおよそ350店と直接契約している。仕入れも販路も全国区なのに、本社が岡山であることはとくに問題ではないそうだ。

「地元の、しかも大好きな岡山で仕事をしています。ただ、仕入れ先も人材も全国区で見ています。社員数からすると小企業ですが、いまや大企業が持つ既得権はけっして優位にならない時代。企業規模も場所もブランド戦略からすると、あまり優先順位の高いものではありません」。

人材に対する考え方も柔軟である。「アイデアがあって、そのためには妥協を許さない覚悟がある人は、うちの会社を活用してアイデアを形にすればいいと思っています。いろんなことができるんですね、きっと」

「さらに、僕はおもしろいことが好きな方だから、楽しそうな企画なら、できるだけやらせてあげたいんですよ。ようやくそう言える資金的な目処や社会的信用もついてきた。自分を試せる場としてぜひ活用して欲しい」。

取材中に垣間見た淺沼社長の穏やかな笑顔は、採用した社員をきちんと育てていこうというおおらかさの象徴のように感じられた。