社長の想い

ものづくり日本を支える、思考する精鋭。

岡田精工株式会社 
代表取締役 岡田 哲治 氏

あらゆる分野の精密部品を手がける

岡田精工株式会社は、材料の調達から設計、製作、検査まで、一貫して行える生産体制のなかで、産業用機械の部品や、減速機、シャフト、歯車などをつくっている。産業用機械には、農機具や工作機械などがある。また、医療機器の部品やレース用の車に使われるギア(歯車)などの特注品も手がける。同一規格の大量生産というよりはむしろ、品質にこだわり、メーカーからは困ったときに相談をされる存在。

同社のホームページのトップ画面には、次のようなメッセージが書いてある。「しなやかな発想と鋭敏な感覚の少数精鋭を志向し、時代の変化とニーズに対応し、蓄積された幅広い技術と設備で新製品の開発に取り組んでいます」。

社長の岡田哲治さんは「他社と一緒ではだめ。他社より、半歩先に抜け出さないと、生き残っていけない」と言う。保有する設備は、NC旋盤やマシニングなど競合他社と大差はない。「機械が同じなら、考え方が違わないと半歩抜きん出ることは難しい」。もっともなことだが、それは容易なことではない。

課題解決力で、メーカーにも頼られる存在

あるエピソードがある。「メーカーさんだって、どうやれば製造できるか見通しのないまま相談を持ちかけてこられまして…」。それは、ある製品の心臓部。「うちにある設備は決まっている。その機械をじっと眺めてね、一晩中。これでどうやれば製造できるか考えるしかないわけですよ」。

NC旋盤で削って丸く仕上げる製品だが、指でつかんでもひずむようなリングを、機械(油圧)でつかんで、それをひずまずに削るという技術を要求された。「どうにかつかんで削れば確かに丸くなりますが、油圧は力が強いので、離せばひずむ。まず、生産の方法から見えないわけですよ」。

他社では旋盤を使わずに製造すると、1個あたり10分かかったとメーカーの人は言う。それでも、誤差は20ミクロン(1ミクロンは、1,000分の1ミリ)出ていた。許容値は真円度5ミクロン。品質に問題があるし、そもそも1個10分かかるのでは納期に間に合わず、人件費もかかりすぎると相談されたのだった。

「そのときは、1年間くらい考え続けました。非常に厳しかった。機械の前で寝泊まりしましたよ」。そして見事、岡田社長は「方法」を見出した。しかも、1個つくるのに1分30秒と大幅な時短。精度は、3ミクロンに抑えた。「5ミクロンではなく、3ミクロンで安定させないと、最終的にいい製品はできない」。岡田社長が静かに言い放った。

「精度の安定と製造時間の短縮で、メーカーからは生産の依頼もいただけた。先が見通せなくても、やってみるかどうか。最後に方法を発見したときは、自分でもびっくりした」。そう言って笑った。

人の性格や想いは製品にも宿る

このエピソードは、チャレンジ精神に満ちた同社の社風を象徴している。前向きな姿勢の失敗は責めない、というのが岡田社長の信条。

「前向きにチャレンジしてみて、結果、成功でも失敗でも、いずれにせよ得るものはある。最初から、確信なんかない。どうにかなるんじゃねえかな、という気持ちだけ。やってみてできなければ、初めてできないと納得いく。やらずにできない、ということはない」。さらに「できません、できませんでは、仕事も来ない。やってみて、ちょっとこの部分がおかしんだけど、というのは、むしろチャンス。これまで、結構できないだろうという難しい案件をクリアしてきた」。

求人は、未経験者にも門を開いている。「誰でも最初は素人。僕だってそうだった」と、屈託のない笑顔を見せる。

そして「素直だってことが大事ですよ。素直だと何でも吸収できる。分からない者の強みで、人に相談して教わる。それが智恵を磨き、技術を高めてくれます。素直さも含めて、人柄は製品に如実に現れるものです」。不思議なもので、製品に限らず機械だって、使っている人の性格がそのまま出るのだそうだ。

素直な人、気配りできる人。岡田社長は、ものづくりの現場から人間を見つめて、そのような人の価値を認めた。

常に一歩先を見据える

ものづくりの現場における気配りとはどういうことか。「ほんのちょっとしたことだけど」と前置きをして、岡田社長は語る。「寸法などは図面通りだが、さわってみると分かる人は分かるという変なこだわり。

例えば、完成した部品の角をほんの気持ち丸くしておく。機械でやる作業時間としては、0コンマ何秒のこと。そこに気が遣えるかどうかは、センス。言って理解できるものでもない。ただ、分かる人には分かって欲しいというこだわりは、ものづくりの喜びでもある」。

その自負心が、岡田精工の信用を育んできた。「お客さんの信用が一番。信用さえあれば、仕事はまわっていく。信用とは、品質。品質は裏切らない。逆に、信用を失うのも品質。普通よりちょっといいかなという品質が、うちの強み。最高ではない」。あくまでも謙虚に言うところも、この企業を象徴している。