社長の想い

業界の常識を超えた試みに挑む防水工事会社。

関西防水工業株式会社 
代表取締役 井上 朗弘 氏

「カンサイボウスイ」に込めた思い

関西防水工業は、登記上のその屋号とは別に「カンサイボウスイ」とカタカナで表したブランドロゴを持つ。漢字表記ではなく、カタカナで表記しているのは、「水」を「防」ぐ工事だけを行っているわけではないという理由から。

読者の皆さんが「防水工事」と聞いて想像するのは、屋根などを修繕し、建物外部から水の侵入を防ぐというものではないだろうか。このような防水工事は、同社の仕事全体の3割程度ではあるが行っている。一方、約7割を占めるのは、道路や上下水道などの社会インフラを対象とした補強や、コンビナートの維持補修、学校の耐震工事などである。

高速道路を例に、具体的にイメージしていただきたい。谷を超えたり海を渡ったりする橋の上の道路には、アスファルト層の下に床板(しょうばん)と呼ばれる下地がある。それは、冬場にまかれる凍結防止剤である塩化カルシウムの浸透などから、コンクリートや鉄筋を守る役割を果たしている。塩分が侵入してしまうとそれらが朽ち果て、崩落の危険にさらされてしまう。

実際、アメリカでは経年変化で腐食した高速道路の橋が崩落した例がある。そのため、この床板は一定期間で保守点検し、状況に応じて修繕する必要があり、2012年に瀬戸中央自動車道の早島~坂出の区間でその修繕工事が着工され、同社もその工事を手掛けている。

また、ガソリンスタンドなどにある腐食のおそれが高い地下貯蔵タンクについては、内面をコーティングするなどの措置を講ずるよう平成22年に危険物関連法令が改正された。それにより、地下のタンクの保守または入れ替えをする工事が発生するが、これもいわゆる防水のノウハウを有する同社だからこそ施工できる仕事の一つ。この工事ができる認定会社は、中国地方ではまだ数社しかない。

つまり、地上・地下を問わず、道路、港湾、学校、病院、上下水道など社会インフラの安全を目的に防災・減災対策を行うのが、「カンサイボウスイ」の仕事である。

環境が人をつくる

同社の経営を担うのは、井上朗弘社長。創業者から数えて3代目である。井上社長は「業界の地位向上をめざしたい」と、確かな口調で静かに語った。「工事会社と言えば、誰でも就ける仕事だという社会的通念を変えたい」のだと。

そのために、まずは社会や仕事に対する姿勢のあり方を自社から見直そうと、社員の育成に傾注している。「教育は『朱に交われば赤くなる』ということわざの通り。文化って大半がどうかということだと思う。大半がまともな考えをしていたら、まともな人が残る」。

取り組みは、小さな改善の積み重ねにほかならない。例えば、クルマの駐車の仕方。白線に対してナナメに止めたり、考え無しに頭から突っ込んでいたりすると、「こういう理由でこう直して欲しい」と具体的に社員に語りかける。

私たちがめざす姿

また、社屋の洗練されたデザインやロゴマークの制定も、業界の地位向上をめざした取り組みの一つ。

さらに、Jリーグに加盟するプロサッカークラブ「ファジアーノ岡山」のスポンサーでもある。これは、宣伝目的ではないので、スタジアムに看板を出しているわけではない。チームが子どもを対象に開くサッカースクールの費用を提供している。

ワーカーではなく、品格のある大人に

同社の仕事は決まった規格に沿って行うことが大半であるが、「こんな問題が起きたけど、どうしようか…」という相談に始まることもある。補修・補強技術を核とした修繕工事の仕事を、井上社長は町医者に例えられた。

「胃が痛いと訴える患者さんを診るとき、食あたりの可能性のほか、様々な要因を検証して判断するのと同じです。例えばひび割れたコンクリートを総合的に診て、原因を突き止めて、処置を講じる仕事です」。

このような仕事は誰にでもできるわけではない。一定の経験と技術が必要である。しかし、労働集約型の業界にあって、労務管理や工程管理を少しでも怠ると、翌日の仕事の約束さえ守れない状況に陥る。人が資本の業界は、人の教育とマネジメントを抜きに地位向上はあり得ない。教育の成果か、「うちの社員は、みなマジメなんですよ」と照れたように笑う。マジメとは、「コトの本筋を理解して、それがぶれないこと。また、信頼につながることを継続できること」だと井上社長は定義づける。

「経営においてはまだまだ未熟で、わたしは小手先のことしかしていない」と謙遜されるが、「中小企業は売上を競っても仕方ないと思う。かといって、現状維持をめざすと衰退する」と分析し、「常に新たな挑戦をしながら、経営内容を充実させていきたい」と締めくくられた。

業界の地位向上の試みにより、新しい意識を持った人材が定着する日も近いはずだ。明治・大正・昭和初期を生きた医師であり政治家の後藤新平という人がいる。「金を残す人生は下、事業を残す人生は中、人を残す人生こそが上なり」という名言でも知られる。井上社長は、日々のささやかな取り組みを通して、業界に優れた「人」を残そうとしているのだろう。