社長の想い

「日本の農業の課題を解決する」というぶれない想いを貫く。

株式会社 果実工房 
代表取締役 平野 幸司 氏

社会的な問題意識を起点に

果実工房のホームページをぜひ見ていただきたい。そこには、瑞々しい果物が現れて、「コラーゲンゼリー」などの商品が出てくる。見ただけで、美味しい果実をもとに作られた加工食品を販売している会社だとわかる。同社の代表取締役・平野幸司氏は、お菓子屋という狭い視点では事業をとらえていない。自社のことを「農業の課題を解決するために立ち上げた会社」だと言い切る。

平野社長が着目しているのは、廃棄に追いやられる農産物である。あまりわたしたちの目には触れない事実ではあるが、商品として出荷できる農産物は、規格をクリアしていることが前提である。サイズ、色、形など、一定の基準を超えていないと市場には出ない。しかし、いわゆるB品であっても、美味しく食べられる農産物は、実は多い。また、豊作になると、価格調整などの機能が働いて、廃棄に追いやられてしまうこともある。

このように、市場には出ないが問題なく食べられる果物に、新しい価値を吹き込み、商品として販売するのが、同社の「農業の課題解決」の一つの方法である。同社のホームページに並ぶ美味しそうなゼリーやお菓子は、このようにして価値創造された賜物である。

社会的な視点と生活者の視点と

この取り組みは、同社の企業理念が具現化されたものである。理念について、平野社長は次のように語る。

「わたしたちは、日本の農業資源を活用し、農業の活性化、産業化に取り組んでいます。果実工房が生み出すサービスは、新しい価値を創造することで、豊かな食文化を育むと同時に、日本における食糧の自給率向上に貢献していることになります」。岡山という地方都市にありながら、もはや視点は「日本」である。しかも、農業のかかえる課題解決の解は見た目にも美しく、美味しそうである。それは、生活者の目線を大切にしている証である。

「最近の2、30代の人は、わたしたちが小さかったころに比べてあまり果物を食べません。それ以外のおやつの選択肢が増えたということもあると思います。しかし、お母さんが果物を食べないと、子どもは食べない。果物はカラダにいいものなので、加工してでも、口に入れてあげたい」。そういう願いから、果物をゼリーなどに代表される加工品にした。

国産の果物にこだわるのも、安全・安心を最優先した食べ物をお届けしたいと願う社長の気持ちである。また、国内の農業の課題解決という創業の理念を貫く姿勢の現れでもある。

信頼をゼロから築く

このビジネスの成立には、「課題を抱えている農家さん」との出会いが鍵を握る。課題とは、例えば、規格外の果物の出荷先に困っているなどである。いまでこそ、同社の評判を聞きつけて、果物の生産者が問い合わせてこられるそうだが、事業立ち上げ時は、安定的な農産物の仕入れに苦労したという。

同社のビジネスモデルを知った生産者の方が、もっと高値で買ってくれそうな別の加工業者と天秤にかけるなど、約束通りの仕入れができなかったこともあった。当初は、提携した農家さんの収穫や出荷の手伝いなどもして、現場でともに汗をかくことで、「農業の課題」が何であるかを肌で感じた。生産者との信頼関係をゼロから丁寧に築いた上に、いまがある。

社員一人ひとりが支える「ブランド」

一方で、消費者とのコミュニケーションポイントを整理して、自社のブランド化にも取り組む。商品パッケージやホームページ、カタログのデザインなどは、若い女性に好感を抱かれそうなものであると、一目で感じられると思う。

ブランドは、表面だけではない。働く社員一人ひとりの意識もブランドを構築している重要な要素である。本社の1階では、商品の箱詰めや出荷などの仕事をしているスタッフがいた。丁寧に心を込めてお届けしたいという気持ちが、その姿勢から伺える。お届けしたお客さまに気持ち良く受け取っていただき、美味しく食べていただいてはじめて「農業の課題」は解決できたと言える。

廊下の壁を見ると、「ありがとうカード」というものが、一面にぎっしりと貼ってあった。「○○さん、ありがとう」というタイトルで始まるその紙は、A4サイズの用紙の半分くらいの大きさ。そこに書かれている文章から、社員同士が互いに良さを認め合い、高め合う様子が感じられた。2011年創業にして、スタッフ30人以上。その事実からも、掲げた理念の正しさと崇高さを思い知った。

株式会社 果実工房