社長の想い

強く、柔軟な製造現場が新しいモノづくりのやりがいを創出する。

東進工業株式会社 
代表取締役 中村 篤志 氏

最新設備の導入で、高まる期待に応える

1950年代半ばから始まった日本の高度経済成長を支え、海外から高い評価を得て今日に至る日本のモノづくり。あらゆる製品の高い品質は、その製品を構成する部品の品質の高さによって決まると言っても過言ではない。

東進工業株式会社もそんな日本のモノづくりを支えてきた企業だ。大手メーカーの農業機械やフォークリフト、産業用ロボット、建設機械、工作機械など幅広い分野の機械に組み込まれる金属加工部品をNC旋盤加工やマシニング加工の技術で製造。試作品から量産まで、また小ロットにも対応し、低コスト、短納期で高い品質を実現している。

「年々、製品の完成度に対する取引先の要望が厳しくなってきている」と言うのは、2006年から代表取締役を務める中村社長。
「今、品質は良くて当たり前。当社では、それを保持するために最新の高精度な工作機械や計測装置・測定器を導入し、優秀なオペレーターを育てようとしています。設備投資は惜しまず、国内の工場は24時間稼働させ、生産性の向上とスピーディーな対応を心がけているので、おかげさまで多方面から発注を頂いています」

リーマンショックを乗り越え、中国へ進出

1969年、父親である現会長が広島県三原市で旋盤加工工場を創業し、1979年には取引先から声がかかり岡山市に移転。中村社長は跡を継ぐつもりで、大学卒業後は工具関連の企業で修業しつつ、休みを取っては後々必要になる機械加工の勉強にも励んだ。

中村社長が東進工業に入社した当時は景気も今一つで、「もうこれからは鉄工所の時代じゃない」と言われたりもしたが気持ちは変わらず、20年以上現場で製造技術や工程管理、人材採用など、あらゆる仕事を手掛けていった。

2006年、代表取締役に就任。翌年には取引先が中国に進出することになり、東進工業も共に出資する形で中国に関わることになっていくのだが、その直後にリーマンショックの洗礼を受ける。

「リーマンショックの時は大変でしたが、中国で受注した仕事を日本で行うことで利益を出し、従業員にはできるだけ残ってもらえるようにしました。その後、2010年には独資で現地法人子会社を設立し、中国工場を立ち上げました。今振り返れば、中国に進出したことで視野も広がったし、日本と中国の良いところを取り入れて、いろいろな手法を考えることができるようになり、中国に出てよかったと思っています。当社にとって大きな転換期でしたね」

2013年以降、「ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金」をはじめとした国の補助金の交付承認企業に認定され、工場の増設や設備に資金を投入し、顧客の厳しい要望に応える体制を整えていった。

長年現場に立っていた中村社長は、今でも自ら図面を引き、プログラムを組み、急な依頼や製造の不具合に対応。最新機器の導入等、積極的な設備投資と相まって、徹底した「品質重視・コスト削減・納期遵守」を維持している。

築いてきた信用が仕事を呼び込む

東進工業では積極的な営業は行っていないが、創業以来変わることのない前向きな姿勢を買われ、仕事の依頼は途切れることがない。また、条件が厳しい依頼でも、できるだけ断らないようにしている。

「ほかの工場でできないと言われた仕事が、うちではすぐにできた。そんな時はうれしいですし、達成感がありますよ。今後は、私が今一人で担当しているような技術の改善や開発を専門に手掛ける部門を作っていきたいですね」と中村社長は仕事の面白さを語る。

現在新たに始まった中国での仕事も、今までの実績を見て「東進工業なら大丈夫」と先方が判断しての依頼だ。リーマンショックで苦しかった時代の中国進出や、積極的な設備投資とより高度な加工技術への取り組み、大手メーカーとの取引で築いた品質管理体制など、これまでの挑戦がさらに大きな実を結び始めているのだ。

日々「お客様に喜ばれる良いものを作る」ことに専念した結果、技術の高さと対応力が認められ、新たな仕事につながっていった。今後は、これまで経験したことのないような製品作りに挑戦することも考えられるため、より主体性をもった組織づくりが必要だと中村社長は予測する。

主体性をもって新しい仕事に取り組みたい

数多くの依頼に積極的に対応してきた経験は、東進工業流のスタイルを作った。工場での部品製造と聞くと、同じ作業の繰り返しをイメージするかもしれないが、そうではないところに東進工業の多様性と、時代が求める製造業の姿が反映されている。

「当社では、一人のオペレーターが同じ作業を繰り返すのではなく、製造や品質検査、作業性を高める治具の製作など、さまざまな作業をこなさなければなりません。昔のやり方を受け継ぐというより、最新の設備を導入した時に臨機応変に対応できる力が必要なのです」

東進工業が目指すのは、緻密で正確な技術を備えながら、マニュアルで動くのではなく、技能者一人ひとりが柔軟な発想力で動かす製造現場。そんな現場で行われるモノづくりは、主体性をもった製造業の在り方と同時に、働く者にも新しい働き方とやりがいをもたらしてくれるのではないだろうか。