社長の想い

景気に流されない堅実経営の影に、無骨でまっすぐな経営者あり。

株式会社 シーエス建材トーヨー住器 
代表取締役 藤井 裕史 氏

約束を守り続けることで着実に成長

岡山県南部で内窓取付、外構・エクステリアの施工を主力とする企業。仕入れ先は、LIXIL、YKK AP、旭硝子などと言えば、ある程度イメージがわくだろうか。戸建て住宅や中低層の店舗などを中心に、アルミサッシや建具、住宅設備機器(風呂、キッチン、洗面など)を、主にメーカーの下請けとして納品・施工する。

代表取締役の藤井裕史さんは「会社を設立して10年以上やってこられたのは、まわりに助けられているから」と謙虚に言う。売上げは、毎年増加傾向。「景気がパッとしなくても仕事がいただけているのはなぜか。いまでも答えが見つからない。何でうちに仕事がいただけとるんか、自問自答よ」と、はにかむ。

しかし、そこは、同社のホームページの最初にある言葉「即対応をモットーに地元密着を目指しています」にヒントを見た気がした。「お客さんはこんなふうにしてあげると喜ばれるんじゃないかと考えながら、言われたことを確実にする。ただそれだけ」。しかし、未来永劫、増収増益の保証は、当たり前だがどこにもない。

これからの業界を見て、更なる発展をめざす

「これから建設業界は大変なんよ。人口は減るし、消費税が上がるとなおさら」。下請けであり続ける以上、元請けの動向に左右される経営体質になってしまう。それでは、安定して質の高い仕事を続けていくことが難しい。そう考えた藤井社長は、自らが元請けとなって安定した経営をめざすなかで、下請けとしての仕事も、受注状況にかかわらず安定したものにしようと模索している。そして、自ら二級建築士の資格を取得。社員には、一級建築施工管理技士も配置した。

元請けになるということは、住宅設備やサッシを求める一般顧客を開拓するということである。元請けの一次代理店でもある同社は、そのメーカーの商品を購入する顧客を自ら創造することで、互いにウイン・ウインの関係を築くことができる。しかし、市場の未来は決して楽観的ではないにもかかわらず、なぜ建築業にこだわるのか。藤井社長の答えは、実に単純だった。

「この業界でしか飯を食ったことがないから」。学校を出てすぐに建築業界に入って20年以上が経つ。「落合監督の言葉だったと思いますが、自分は誰よりも野球を知っている。そこから離れると、ただの親父だと言っていました。わたしも、建築を離れるとただの親父。いまさら薬を売れと言われても、よう売らん」。しかし、その言葉には、潔さや覚悟も感じられた。

挫折から学んだこと。そして恩師の言葉

自分の強みを活かして、いまの延長で事業を続けていく決意を固める藤井社長にも、折れそうになったときがあった。会社設立して初めての決算のとき。800万円の赤字を出した。

「正確に言うと、赤字だけど、お金はまわっている。ただ、いま会社を畳んだら800万円不足するという状態でした。本当に困った、辞めないけんと思った。それで、前職の社長に相談しました」。ダメだと思えば、辞めてもいい。責任はとるからと相談にのってくれたそうだが、藤井社長の心に響いた言葉は、それではなかった。

「わしも辞めたろうと思ったことがあった。そう言われたんよ。尊敬していた人にもそんな思いをされたことがあったと知って、もう1年頑張ってみようと思うた」。それから初年度の体制を見直し、人材を整え、営業に特化できるように、業務の外注も試みた。

頑固に守り抜く精神

「ウサギとカメの話があるじゃろう」。藤井社長は、おもむろにイソップ寓話を持ち出された。「わたしは、うさぎは苦手。コツコツとやっていくカメのような生き方がいい。でも、鈍カメではいけんよ。一歩ずつ進むカメがいい」。

具体的に言うと、目標をもってしっかり歩んでいく人。しかし「カメごときにゴールは見えない。責任を背負って走っている者にさえゴールは見えないのだから、カメに見えるはずがない。

方向を見失ったカメがいると行く手を遮り、叱ることもあれば、話し合うこともある」。翻って、自らのことを次のように評した。「約束を守るとか、決めたことはやり抜くとか、わたしに経営者としての資質があるとすれば、その2点に尽きる。そこだけは、ちゃんとやるよ。決めたことは、いつまでもしよるわ」。

背骨を感じさせるまっすぐな生き方に、これまでさぞご苦労がお有りだったのかと問えば「若いころは何不自由なく生活させていただきましたよ。しいて言うなら、高校のときの運動部のおかげでもあるし、親の教育のおかげでもあろう」と笑う。

社員にはあまり多くを要求しない。言われたことは必ず返事をする。声なき声が聞こえる営業マンになれ。お客さまが何を要望しているか察して喜んでいただくことをやる。業績向上の秘策がこの3つであるとするなら、当たり前のことが徹底できている企業の底ヂカラを見た気がした。

株式会社 シーエス建材トーヨー住器